「また、この夢だ。」
夢の途中で、そう感じたことはないでしょうか。
場所も同じ。
登場人物も似ている。
そして、なぜか最後はいつも同じような展開になる。
数日前に見た夢ならまだしも、何年も前に見た夢が突然もう一度現れることもあります。
こうした、似た内容やテーマが繰り返し現れる夢は「反復夢(recurrent dream)」として研究されています。
ただし、
「同じ夢を見るのは、心に未解決の問題があるから」
「追いかけられる夢には○○という意味がある」
と単純に決めることはできません。
夢については、現在も分かっていないことが数多くあります。
一方で、起きているときの経験や感情が夢の内容に反映されることや、ストレスと反復夢の間に関連がみられることは研究されています。
この記事では、夢占いではなく、現在の睡眠研究や心理学研究をもとに「なぜ似た夢を繰り返すことがあるのか」を見ていきます。
そもそも「同じ夢」とは、本当にまったく同じ夢なのか?
「同じ夢を何度も見る」と言っても、毎回まったく同じ映像が再生されているとは限りません。
例えば、
・なぜか学校に遅刻する
・知らない場所で道に迷う
・何かから逃げ続ける
・昔住んでいた家に戻る
・準備をしていないのに試験が始まる
など、細かな場面は変わっていても、似た状況や感情が繰り返されることがあります。
反復夢の研究でも、同じ内容や同じテーマを持つ夢が繰り返し現れるものが対象とされています。
つまり、
「夢の映像が完全にコピーされている」
というより、
「似た物語の型が何度も現れる」
と考えたほうが、実際の体験に近い場合もあります。
ここが、反復夢を考えるうえで最初のポイントです。
なぜ同じような夢を繰り返すのか?
反復夢と関係すると考えられている主な要素
| 関係すると考えられている要素 | 夢への現れ方の例 |
| 日中の経験 | 仕事・学校・人間関係が夢に登場する |
| 過去の記憶 | 昔の家や学校、懐かしい人物が出てくる |
| 感情 | 焦り、不安、楽しさなどが夢の雰囲気に反映される |
| ストレス | 似たテーマの夢を繰り返し思い出すことがある |
| 夢の想起 | 途中で目覚めると夢を覚えていることがある |
結論から言うと、反復夢が起こる理由は一つに特定されていません。
現在の研究から考えられるのは、起きている間の経験、記憶、感情、ストレスなどが夢の内容と関係している可能性です。
ただし、
「この感情があるから、この夢を見る」
というような単純な対応表があるわけではありません。
起きているときの出来事は夢にも入り込む
夢には、日常生活の出来事がそのまま登場することがあります。
仕事をしている人が仕事の夢を見たり、学生が学校の夢を見たりすることは、それほど不思議ではありません。
一方で、現実の出来事がそのまま再現されるとは限りません。
実際には、
「職場で感じた焦り」
が、
「電車に乗り遅れる夢」
として現れるかもしれません。
また、
「明日の予定が気になっている」
という状態が、
「何かを忘れて慌てている夢」
になることも考えられます。
夢の研究では、起きているときの経験や関心が夢の内容に反映されるという「連続性」の考え方があります。
ただし、夢は現実の録画映像ではありません。
記憶の一部や昔の出来事、想像などが混ざるため、不思議な物語になることもあります。
ストレスと反復夢には関連がみられる
反復夢について興味深いのが、ストレスとの関係です。
過去の研究では、反復夢を見ている人では、そうではない人と比べて心理的なウェルビーイングが低い傾向が報告されています。
また、学生を対象とした研究では、試験前のようなストレスが高まりやすい時期に、反復夢の想起が増えたという報告もあります。
ただし、
「ストレスがあれば必ず反復夢を見る」
という意味ではありません。
ストレスを感じても夢をほとんど覚えていない人もいますし、特にストレスを自覚していなくても同じ夢を見る人もいます。
そのため、
「最近同じ夢を見る=何か重大な問題を抱えている」
と考える必要はありません。
「最近少し忙しかったかな」
「何か気になっていることはあったかな」
と、日中の生活を振り返る程度に考えると分かりやすいでしょう。
夢とストレスについてはこちらの記事でも紹介しています。
夢を見るのはレム睡眠だけではない
夢というと、
「レム睡眠中に見るもの」
というイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし現在では、夢はレム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠から目覚めた場合にも報告されることが分かっています。
一般的には、レム睡眠から目覚めたときの夢のほうが、長く、鮮明で、物語性を持つ傾向があります。
一方で、ノンレム睡眠中にも夢や夢に近い体験は起こります。
そのため、
「反復夢=レム睡眠に異常がある」
というように考えることはできません。
夢を見る仕組みそのものには、まだ解明されていない部分が多く残されています。
夢についてさらに詳しく知りたい方はこちらも参考にしてみてください。
なぜ昔の家や学校が何度も夢に出てくるのか?
反復夢では、何年も訪れていない場所が繰り返し登場することもあります。
例えば、
・子どもの頃に住んでいた家
・通っていた学校
・昔の職場
・以前よく歩いていた道
・長く会っていない人物
などです。
ここで、
「昔の家が出たから、昔に戻りたいという意味」
と決めつける必要はありません。
私たちの夢には、最近の出来事だけでなく、過去の記憶の断片も入り込みます。
しかも夢の中では、それらが自由に組み合わされます。
昨日会った人が昔の学校にいたり、子どもの頃の家なのに現在使っているスマートフォンが置いてあったりすることもあります。
夢の中では、時間の順番まで現実と同じである必要はありません。
だからこそ、何十年も前の場所が突然夢の舞台として再登場しても、それ自体は不思議なことではないのです。
「追いかけられる夢」には決まった意味がある?
同じ夢について調べると、
「追いかけられる夢は、現実から逃げている証拠」
「落ちる夢は自信を失っているサイン」
「遅刻する夢は焦りを意味する」
といった説明を見かけることがあります。
こうした説明は分かりやすい反面、科学的に一つの意味へ決めることはできません。
例えば、同じ「追いかけられる夢」でも、
怖かった人。
なぜか楽しかった人。
途中で相手と仲良くなった人。
逃げ切った人。
では、夢の体験そのものが違います。
さらに、その人が置かれている状況や過去の経験も異なります。
そのため、
夢の場面だけを見て、心理状態を判断することはできません。
反復夢を見ると意味を知りたくなるものですが、「○○の夢=○○の心理」という夢辞典のような見方とは分けて考えたほうがよいでしょう。
同じ夢は「潜在意識からのメッセージ」なのか?
夢について語るときによく登場するのが「潜在意識」という言葉です。
心理学の歴史では、フロイトやユングをはじめ、多くの研究者が夢の意味についてさまざまな理論を提案してきました。
ただし、現在の睡眠研究では、
「反復夢には必ず隠されたメッセージがある」
と確認されているわけではありません。
反対に、
「夢には一切意味がない」
と断定できるわけでもありません。
現実の経験や感情が夢の内容に入り込むことは研究されています。
そのため、
夢の内容には、その人が普段経験していることの一部が反映される場合がある。
この程度に考えるのが、現在分かっている範囲に近いでしょう。
同じ夢は未来の出来事を知らせている?
何度も同じ夢を見ると、
「何か起こる前触れでは?」
と不安になることもあります。
しかし、反復夢が未来の出来事を予測することを示す科学的な根拠は確認されていません。
一方で、起きているときの経験や感心が、夢の内容に反映されることは研究されています。
私たちは毎日、
見たもの。
聞いたもの。
考えたこと。
心配したこと。
昔の記憶。
さまざまな情報を抱えながら眠ります。
それらの一部が夢の中に現れた結果、似た状況が何度も作られている可能性があります。
同じ夢を見たからといって、その出来事が現実でも起こると考える必要はありません。
同じ夢を見たときは「意味」より「変化」を見ると面白い
同じ夢を何度も見ると、
「この夢には何の意味があるんだろう?」
と考えたくなります。
そこで少し視点を変えて、
夢の意味ではなく、前回との違いを見る
という楽しみ方もあります。
例えば、
以前は逃げていたのに、今回は立ち止まった。
いつも暗かった場所が明るかった。
登場人物が変わった。
目的地までたどり着けた。
夢そのものは似ていても、細かな部分が変わることがあります。
もちろん、その変化に特別な心理的意味があると断定することはできません。
ただ、自分がどんな夢を覚えているのかを観察すると、
「私は昔の学校がよく夢に出てくるな」
「忙しい時期は仕事の夢を覚えていることが多いな」
など、自分なりの傾向が見つかることがあります。
夢を見ること自体を、少し面白く観察できるようになるかもしれません。
夢を記録するなら「夢占い」ではなく観察日記にする
夢をよく覚えている人なら、簡単に記録してみる方法もあります。
ただし、
「蛇が出た=○○」
「追われた=○○」
と意味を決める必要はありません。
記録するなら、
・見た日
・覚えている場面
・登場した場所
・夢の中で感じたこと
・最近忙しかったか
・寝る時間がいつもと違ったか
程度で十分です。
何週間か記録すると、同じ夢だと思っていたものにも微妙な違いがあることに気づくかもしれません。
夢の正解を探すというより、
自分の夢にどんな傾向があるのかを見る
という使い方です。
これは夢を医学的に判断するための方法ではありません。
あくまで、自分の睡眠を振り返る一つの記録として楽しむものです。
夢をよく覚えている日と、覚えていない日があるのはなぜ?
「最近、夢が増えた気がする」
という場合にも、少し注意したいポイントがあります。
実際に夢を見る回数が増えたとは限らないからです。
私たちは、夢を見ても朝には忘れてしまうことがあります。
一方で、夢を見ている途中や直後に目覚めると、内容を覚えていることがあります。
つまり、
夢を見た回数と、夢を覚えている回数は同じではありません。

※「夢を覚えている回数」の違いをイメージした図です。
「今日は夢を見なかった」と感じても、実際には単に思い出せないだけかもしれません。
夢を覚えているかどうかまで含めて考えると、「最近夢が多い」と感じる理由も少し違って見えてきます。
寝る前の過ごし方を振り返ってみる
同じ夢そのものを無理になくそうとする必要はありません。
ただ、
「最近、寝る時間がかなり遅くなった」
「仕事を終えた直後にそのまま寝ている」
「夜までスマートフォンを見続けている」
という場合は、夢とは別に、自分の睡眠習慣を振り返ってみてもよいでしょう。
睡眠は一晩だけでなく、毎日の生活リズムとも関係しています。
夢をコントロールしようとするのではなく、
「最近ちゃんと寝る時間を確保できているかな」
と普段の生活を見るきっかけにする程度で十分です。
睡眠前の習慣についてはこちらの記事でも紹介しています。
▷睡眠の質を下げるNG習慣10選|知らないうちにやっている悪習慣とは?
まとめ|同じ夢は「答え」より「なぜ繰り返すのか」が面白い
同じ夢を何度も見ると、
「この夢には何か意味があるのでは?」
と思ってしまいます。
しかし現在の研究では、反復夢に一つの原因や決まった意味があるとは分かっていません。
一方で、
・起きているときの経験が夢に入り込むことがある
・ストレスと反復夢の間に関連がみられた研究がある
・夢はレム睡眠だけでなくノンレム睡眠でも報告される
・過去の記憶が夢の中に登場することがある
・夢の内容だけから心理状態を判断することはできない
といったことは、これまでの研究から見えてきています。
つまり、同じ夢を見たからといって「何かの前触れだ」と心配する必要はありません。
それよりも、
「どうして脳は、昔の記憶をこんな形で組み合わせるのだろう?」
「なぜ今になって、この場所が夢に出てきたのだろう?」
と考えてみる。
答えが簡単に見つからないところも、夢の面白さなのかもしれません。
次に同じ夢を見たときは、前回とまったく同じだったのか、それとも少しだけ変わっていたのか。
そこに注目してみると、いつもの夢が少し違って見えるかもしれません。
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▷睡眠の質を下げるNG習慣10選|知らないうちにやっている悪習慣とは?

参考・出典
・反復夢とストレス・心理状態に関する研究
Zadraほか(1998)
・日中の経験と夢の内容に関する研究
Schredl & Hofmann(2003)
・繰り返し見る夢の内容に関する研究
Gauchatほか(2015)
・夢とレム睡眠・ノンレム睡眠に関する研究
Tsunematsu(2023)
・試験前のストレスと反復夢に関する研究
Duke & Davidson(2002)

