「最近、ちょっとしたことでイライラする。」
「いつもなら気にならないことが、妙に気になる。」
「疲れているのに、布団に入るとなかなか眠れない。」
そんな日が続くと、
「ストレスがたまっているから眠れないのかな?」
と思うことがあります。
実は、睡眠とストレスはどちらか一方だけの問題とは限りません。
睡眠不足が続くと日中の気分や感情に影響が出やすくなり、一方で、考え事や緊張が続くと寝つきにくくなることもあります。
つまり、
睡眠不足
↓
気持ちに余裕がなくなる
↓
ストレスを感じやすくなる
↓
夜も考え事が続く
↓
さらに眠りにくくなる
という循環が生まれることがあります。
この記事では、
・睡眠不足とストレスにはどんな関係があるのか
・寝不足の日にイライラしやすく感じるのはなぜか
・ストレスがあるとなぜ眠りにくくなるのか
・生活の中で見直しやすいポイント
について、現在分かっていることをもとに紹介します。
睡眠不足でストレスを感じやすくなることはある?
結論からいうと、睡眠が不足すると、日中の感情や気分に影響が出る可能性があります。
2024年に発表された、50年以上にわたる睡眠と感情の研究をまとめた系統的レビュー・メタ解析では、154研究、5,717人分のデータが分析されました。
その結果、睡眠時間を短くしたり、徹夜をしたり、睡眠を途中で分断したりすると、ポジティブな感情が低下する傾向などが確認されています。
ただし、
「寝不足なら必ずイライラする」
「睡眠不足だけで気分が決まる」
という意味ではありません。
仕事、人間関係、体調、その日の出来事など、私たちの気分にはさまざまな要因が関係しています。
それでも、
「今日はなぜか余裕がないな」
と感じたとき、前日の睡眠を振り返ってみることは一つのヒントになります。

寝不足の日は、なぜ気持ちに余裕がなくなりやすい?
睡眠不足の影響として分かりやすいのが、日中の眠気や注意力の低下です。
厚生労働省の資料でも、睡眠不足は日中の眠気や疲労に加え、注意力や判断力の低下にも影響するとされています。
例えば、
・いつもより仕事に時間がかかる
・小さなミスが気になる
・会話に集中できない
・予定どおり進まず焦る
といったことが重なると、それ自体がストレスになることがあります。
つまり、
「睡眠不足 → 直接ストレスが増える」
と単純に考えるより、
「睡眠不足によって日中の余裕が減り、結果としてストレスを感じやすくなることがある」
と考える方が分かりやすいでしょう。
寝不足の時に感じやすい変化
| 状態 | 日常で起こりやすいこと |
| 眠気が強い | 仕事や勉強に集中しにくい |
| 注意力が落ちる | 小さなミスが増えやすい |
| 疲労感が残る | 普段より物事を面倒に感じる |
| 気持ちに余裕がない | 些細なことが気になりやすい |
| 判断しにくい | 迷ったり焦ったりしやすい |
※すべての人に同じ変化が起こるわけではありません。
脳では何が起きている?
睡眠と感情の関係を調べた研究では、睡眠不足のときに感情に関係する脳活動が変化することも報告されています。
よく知られているのが、
・感情的な情報に反応する「扁桃体」
・判断や感情の調整などに関係する「前頭前野」
の関係です。
過去の脳画像研究では、睡眠をとった場合と睡眠不足の場合で、感情的な刺激に対する脳の反応に違いがみられました。
ただし、人間の感情は脳の一部分だけで決まるものではありません。
そのため、
「寝不足になると感情のブレーキが壊れる」
とまで断定するのではなく、
「睡眠不足によって感情の受け止め方や調整に変化が生じる可能性がある」
くらいに考えておくとよいでしょう。
脳への影響や集中力・判断力との関係については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
▷寝不足で起こる恐ろしい変化|知らないと危険な睡眠不足の真実
反対に、ストレスがあると眠りにくくなることもある
睡眠とストレスの関係でややこしいのは、反対方向の影響もあることです。
例えば、布団に入ったあと、
「明日の仕事、大丈夫かな。」
「さっきの言い方、まずかったかな。」
「明日は何時に起きればいいんだっけ。」
と考え始めると、なかなか頭が休まらないことがあります。
国立精神・神経医療研究センターも、強いストレスを感じる出来事をきっかけとして、一時的に眠りにくくなることがあると説明しています。
また、2024年の実験研究をまとめたレビューでも、ネガティブな感情によって入眠までの時間が延びる傾向が示されています。
ただし、その他の睡眠指標については、はっきりした結論が出ていません。
つまり、
ストレスがある
↓
布団の中でも考え続ける
↓
寝つきにくい
↓
睡眠時間が短くなる
↓
翌日に余裕がなくなる
↓
さらにストレスを感じる
という循環が起こる場合があります。

では、どうやって悪循環を小さくしていく?
ここからは、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」や国立精神・神経医療研究センターの情報を参考に、日常生活で取り入れやすいポイントを見ていきます。
1.まずは起きる時間を大きくずらさない
眠れなかった翌日は、
「今日は昼まで寝よう。」
と思いたくなります。
しかし、起床時間が日によって大きく変わると、睡眠・覚醒のリズムもずれやすくなります。
国立精神・神経医療研究センターでは、眠れなかった翌日でも、できるだけ一定した時間に起きることを紹介しています。
「何時に寝るか」だけではなく、
「何時に起きるか」
にも目を向けてみると、生活リズムを振り返りやすくなります。
2.朝から日中に光を浴びる
光は、私たちの体内時計を調整する大きな手がかりです。
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、
「日中にできるだけ日光を浴びる」
ことが紹介されています。
朝起きたらカーテンを開ける。
昼間は外に出る。
特別なことをしなくても、普段の生活の中で光を意識することはできます。
一方、夜は強い光をできるだけ避けることもポイントです。
3.寝室とスマホを少し離す
寝る直前までスマートフォンを見てしまう人は少なくありません。
問題は、ブルーライトだけではありません。
動画、SNS、ゲーム、ニュースなどを見続けることで、就寝時間そのものが後ろにずれてしまうこともあります。
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、
「寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まない」
ことも良い睡眠のための方法として紹介されています。
いきなりスマホを完全にやめる必要はありません。
例えば、
・充電場所をベッドから離す
・布団に入ってからSNSを開かない
・動画の「あと1本」をやめる
・寝る前は画面を見る時間を短くする
など、自分が続けやすいところから変えてみる方法があります。
スマートフォンと睡眠についてはこちらで詳しく紹介しています。
▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説
4.眠れないのに布団の中で粘り続けない
眠れないと、
「あと6時間しかない。」
「早く寝ないと明日がつらい。」
と考えてしまいます。
ところが、眠ろうと頑張るほど頭が冴えてしまうことがあります。
国立精神・神経医療研究センターでは、うまく寝つけない場合には一度寝床を離れ、緊張をほぐし、眠気が来てから寝床に戻る方法を紹介しています。
ここで大切なのは、
「何分たったら必ず布団を出る」
と数字にこだわりすぎないことです。
時計を何度も確認すること自体が気になってしまう人もいます。
眠気がなく、考え事ばかり続いていると感じたら、一度寝床を離れる。
そのくらいの考え方でよいでしょう。
5.「8時間寝なければ」と決めつけない
「睡眠は絶対8時間必要」
と思っている人もいます。
しかし、必要な睡眠時間には個人差があります。
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、成人について「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」としていますが、必要な時間には個人差があることも示されています。
そのため、
「昨日は7時間しか眠れなかったから失敗」
「8時間眠れなかったから今日はダメ」
と毎日の数字だけで判断する必要はありません。
むしろ、
・日中に強い眠気がないか
・朝起きたとき休めた感じがあるか
・睡眠時間が極端に短くなっていないか
なども含めて、自分の睡眠を振り返る方が分かりやすいでしょう。
睡眠とストレスの悪循環を小さくするヒント
| 気になること | 見直してみるポイント |
| 休日に昼まで寝てしまう | 起床時間を大きくずらさない |
| 朝から室内にいる | 朝~日中に光を取り入れる |
| 布団でスマホを見る | スマホを寝床から離してみる |
| 眠れないと焦る | 眠気がなければ一度寝床を離れる |
| 8時間にこだわる | 時間だけでなく日中の状態も見る |
私なら「睡眠の原因探し」より1週間の流れを見る
一晩眠れなかっただけで、
「最近ストレスがひどいからだ。」
「睡眠の質が悪くなった。」
と決めるのは難しいものです。
そこで分かりやすいのが、1日ではなく1週間ほどの流れを見ることです。
例えば、
月曜日 6時間 朝は眠い
火曜日 6時間半 普通
水曜日 5時間 仕事中に眠い
木曜日 6時間 夜にスマホを長く見た
金曜日 5時間半 かなり眠い
土曜日 9時間 昼近くまで寝た
日曜日 夜になっても眠くならない
こうして並べてみると、
「平日の睡眠が少ない」
「休日だけ起きる時間が大きくずれている」
「スマホを長く見た日は寝る時間も遅い」
など、自分の生活のクセが見えてくることがあります。
睡眠は一晩だけで評価するより、数日から1週間くらいの流れで見た方が、自分の傾向をつかみやすくなります。

睡眠は「完璧」を目指さなくてもいい
睡眠について調べ始めると、
「7時間30分眠らなければ」
「深い睡眠を増やさなければ」
「毎日同じ時間に寝なければ」
と、だんだんルールが増えてしまうことがあります。
しかし、睡眠は毎日まったく同じにはなりません。
仕事が遅くなる日もあれば、旅行の日もあります。
悩み事があって寝つきにくい夜もあるでしょう。
そのため、
「完璧な睡眠を作る」
というより、
「大きく崩れたら少し戻す」
くらいに考える方が続けやすくなります。
睡眠を気にしすぎること自体が新しいストレスになってしまっては、本末転倒です。
ただし、眠れない状態や日中の強い眠気が続き、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、病気が潜んでいる可能性もあるため、医療機関に相談してください。
睡眠環境や生活習慣をもう少し広く見直したい方はこちらも参考になります。
まとめ
睡眠不足とストレスは、別々に考えにくい関係です。
睡眠が足りないと、眠気や疲労によって日中の余裕がなくなり、普段よりストレスを感じやすくなることがあります。
一方で、ストレスや考え事が続けば、寝つきにくくなることもあります。
この循環を整理すると、
睡眠不足
↓
日中の眠気・疲労
↓
気持ちに余裕がなくなる
↓
ストレスを感じる
↓
夜も考え事が続く
↓
眠りにくくなる
という流れです。
そんなときは、一度に全部変えようとする必要はありません。
・起きる時間を大きくずらさない
・朝から日中に光を浴びる
・寝床からスマホを少し離す
・眠れないときは無理に眠ろうとしない
・睡眠時間の数字だけにこだわらない
まずは一つ、自分が続けられそうなものから試してみるとよいでしょう。
そして一晩の睡眠だけを見るのではなく、
「この1週間、どんな眠り方をしていたかな?」
と振り返ってみる。
それだけでも、自分の睡眠とストレスの関係が少し見えやすくなるかもしれません。
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参考・出典
・国立精神・神経医療研究センター
「不眠症(Insomnia)」
・厚生労働省「こころの耳」
「ストレス対処法としての生活習慣-食う・寝る・遊ぶの充電法」
・睡眠不足と感情への影響|Psychological Bulletin(2024)

