朝、目覚ましが鳴る。
「起きなきゃ……」
そう思いながらも、暖かい布団の中でつい口にしてしまう言葉。
「あと5分だけ……」
ところが、その5分が終わると、今度は「もう5分だけ」。
気づけば10分、15分、20分。
最初の目覚ましから、ずいぶん時間が経っていたという経験はありませんか?
不思議なのは、最初から20分寝ようと思っていたわけではないことです。
たった5分のつもりだったのに、なぜ何度も繰り返してしまうのでしょうか。
結論からいうと、目覚めた直後の眠気や、もう少し眠りたいという欲求、再び眠れる環境などが関係していると考えられます。
そして、もう一つ気になることがあります。
そもそも、二度寝は体に悪いのでしょうか?
実は、目覚ましを何度も鳴らす「スヌーズ機能」については、研究によって異なる結果が報告されています。
今回は、朝の「あと5分」が長引く理由と、二度寝についてわかっていることを紹介します。
なぜ「あと5分」が10分、20分になるのか?
朝の布団には、なかなか離れられない魅力があります。
暖かくて、柔らかくて、何もしなくていい。
一方、布団から出れば、一日が始まります。
顔を洗い、着替え、朝食を食べ、仕事や学校へ向かう準備をする。
そう考えると、
「今すぐ起きる」
よりも、
「もう5分だけ眠る」
という選択が魅力的に感じられることもあるでしょう。
ただし、布団の気持ちよさだけで説明できるわけではありません。
朝の「あと5分」には、睡眠そのものの仕組みも関係しています。
① 目が覚めても、頭はすぐに切り替わらない
目覚ましが鳴って目を開けても、頭がすぐに完全な覚醒状態になるとは限りません。
起きた直後には、眠気やぼんやりした感覚が残ることがあります。
これは睡眠慣性(すいみんかんせい)と呼ばれる現象です。
例えば、
- 目は開いているのに眠い
- 頭がぼんやりしている
- 考えるのが面倒に感じる
- 起きても、すぐには集中できない
といった状態です。
睡眠慣性の強さには個人差があり、睡眠不足や起きたタイミングなどにも影響されます。
つまり、目覚ましが鳴った瞬間は、必ずしも頭が十分にはっきりしている状態ではないのです。
睡眠慣性の詳しい仕組みについては、こちらの記事で紹介しています。
② まだ睡眠が足りていない場合がある
人間の睡眠と覚醒には、大きく分けて2つの仕組みが関係しています。
睡眠欲求と体内時計です。
睡眠欲求は、起きている時間が長くなるほど強まり、眠ることで弱まっていきます。
一方、体内時計は、一日の中で眠気や覚醒のリズムを調整しています。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、睡眠と覚醒のリズムは、睡眠欲求と体内時計による覚醒力のバランスで形作られると説明されています。
例えば、前日に夜更かしして十分に眠れなかった場合。
目覚ましによって一度起きても、睡眠欲求が十分に弱まっていないことがあります。
そのため、再び眠りたいと感じる場合があるのです。
ただし、二度寝したくなるからといって、必ず睡眠不足とは限りません。
睡眠慣性やその日の体調、起床時刻など、複数の要因が関係します。
③ 「5分だけ」を何度も繰り返す
ここで、最初の疑問に戻ってみましょう。
なぜ「あと5分」が20分になるのでしょうか。
例えば、次のような朝です。
最初は5分だけのつもりでも、それを4回繰り返せば20分になります。
当たり前の計算ですが、朝の布団の中では、この積み重ねが起こり得ます。
また、眠り直したあとの時間感覚が、実際の経過時間と一致しないこともあります。
では、なぜ「あと30分」ではなく「あと5分」なのでしょうか。
5分という短さなら、起床を大きく遅らせるつもりがなくても選びやすい、という心理的な説明は考えられます。
ただし、人が特に5分を選びやすい理由が科学的に確定しているわけではありません。
大事なのは、短い延長でも、繰り返せば長い二度寝になるという点です。

「あと5分」が長引く仕組み。睡眠慣性や睡眠不足、繰り返す二度寝などが関係します。
そもそも二度寝は体に悪いの?
「二度寝すると体に悪い」
そんな話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、二度寝を一律に悪いものと判断することはできません。
例えば、前夜の睡眠時間が足りなかった人が、起床後に再び眠る場合です。
追加で眠ることによって、睡眠時間を補える場合があります。
反対に、十分に眠っているのに何度も目覚ましを止め、そのたびに眠り直すと、睡眠が中断されます。
二度寝の影響を考える際には、その長さだけでなく、前夜の睡眠状態や起きたあとの調子も関係します。
| 二度寝の状況 | 考えられること |
| 睡眠不足の日に眠り直す | 不足した睡眠時間を補える場合がある |
| 5分おきに何度もスヌーズする | 眠りが繰り返し中断される |
| 長時間眠り直す | 起床時刻が遅くなり、生活リズムに影響する場合がある |
| 起きたあとも強い眠気が続く | 睡眠不足など、別の原因が関係している可能性がある |
では、短時間の二度寝を何度も繰り返すことには、どのような影響があるのでしょうか。
実は、ここに興味深い研究結果があります。
スヌーズ機能は逆効果?研究によって違う結果が出ている
スマートフォンや目覚まし時計には、一定の間隔でアラームを繰り返す「スヌーズ機能」があります。
便利な機能ですが、睡眠への影響については研究が続けられています。
2022年の日本の研究では、目覚めへの悪影響を報告
広島大学の研究者らが2022年に発表した研究では、大学生10人を対象に、スヌーズを使用する場合と使用しない場合を比較しました。
スヌーズを使用する条件では、起床前の20分間に5分間隔でアラームが鳴るよう設定されました。
その結果、スヌーズを使用した場合には、起床前の睡眠が中断され、浅いノンレム睡眠であるN1睡眠や覚醒している時間が増加しました。
研究では、スヌーズによって起床後の睡眠慣性が長引く可能性が報告されています。
ただし、実験の参加者は10人と少なく、結果をすべての人に当てはめることはできません。
2023年の海外研究では、異なる結果も
一方、2023年に発表されたスウェーデンの研究では、普段からスヌーズを使う31人を対象に実験が行われました。
30分間スヌーズを使った場合と、スヌーズを使わずに起きた場合を比較しています。
その結果、スヌーズを使った条件では、起床直後の認知機能テストで成績が改善、または変化しないことが報告されました。
さらに、眠気や気分についても、明確な悪影響は確認されませんでした。
ただし、スヌーズを使った条件では、合計睡眠時間が平均約6分短くなっています。
この研究も参加者が限られており、誰にでも同じ結果が得られるとは限りません。
つまり、スヌーズは絶対に悪いとは言えない
2つの研究を比較すると、次のようになります。

日本とスウェーデンのスヌーズ研究比較。研究条件によって異なる結果が報告されています。
研究対象や実験条件が異なるため、単純にどちらかが正しいと判断することはできません。
現在の研究から言えるのは、スヌーズ機能がすべての人に悪影響を与えるとまでは断定できないということです。
「スヌーズは絶対にダメ」と考えていた方には、意外な結果かもしれません。
二度寝すると、なぜ夢をよく覚えているの?
二度寝をしたとき、
「妙にはっきりした夢を見た」
「さっきまで見ていた夢を覚えている」
という経験はありませんか?
これには、睡眠の仕組みが関係している可能性があります。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があります。
日本睡眠学会によると、一晩の睡眠ではノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返され、明け方になるにつれてレム睡眠の持続時間が長くなります。
レム睡眠中には、鮮明な夢を体験することがあります。
そのため、朝方に眠り直し、夢を見ている途中やその直後に目覚めた場合、夢の内容が記憶に残ることがあります。
ただし、夢はノンレム睡眠中にも起こります。
また、二度寝をすれば必ず夢を覚えているというわけではありません。
二度寝したから特別な夢が生まれたというより、夢を覚えているタイミングで目覚めた可能性があるのです。
朝の短い二度寝にも、こんな睡眠の特徴が隠れているのは面白いところです。
休日の二度寝は、平日と何が違う?
平日なら、仕事や学校などに合わせて起きる必要があります。
しかし、予定のない休日には、起床時刻を自分で決められます。
「今日はもう少し寝ていよう」
そう思って、普段より長く眠ることもあるでしょう。
ここで区別しておきたいのが、二度寝と寝だめの違いです。
二度寝は、一度目覚めたあとに再び眠ること。
一方、寝だめは一般的に、休日などに普段より長く睡眠時間を確保することを指します。
休日に長く眠ることで、睡眠不足をある程度補える場合があります。
ただし、休日に長く眠ったからといって、日頃の睡眠不足を完全に解消できるとは限りません。
また、休日に起床時刻が大きく遅れる生活を続けると、平日と休日の睡眠リズムにずれが生じることがあります。
これはソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)と呼ばれます。
休日に長く眠ること自体が、必ず悪いわけではありません。
注目したいのは、平日と休日で睡眠時間や起床時刻がどのくらい違うかという点です。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
▷ソーシャルジェットラグとは?休日の寝だめが危険と言われる理由
二度寝するなら何分までがいい?
「二度寝が悪いとは限らないなら、何分まで寝てもいいの?」
そう思うかもしれません。
しかし、すべての人に共通する最適な二度寝時間は、現在の研究では確立されていません。
5分なら大丈夫、10分を超えたら悪いという明確な境界があるわけではありません。
必要な睡眠時間や、そのときの睡眠不足の程度、眠り直した際の睡眠状態によっても変わります。
そのため、時間だけで判断するより、次のような違いを見てみると、自分の睡眠状態を振り返る手がかりになります。
- 二度寝した日は、起きたあとにすっきりするか
- スヌーズを繰り返すと、かえってぼんやりするか
- 十分に眠れた日にも二度寝したくなるか
- 休日だけ長く眠っていないか
こうした違いは、自分の睡眠習慣を理解するための参考になります。
毎朝「あと5分」を繰り返すなら、こんな方法もある
二度寝を減らしたい場合、目覚ましの使い方を変える方法があります。
① 最初のアラームを鳴らす時刻を見直す
例えば、7時に起きる必要があるのに、毎朝6時30分からスヌーズを繰り返している場合。
実際には、30分間も起きたり眠ったりを繰り返していることになります。
そのような場合は、必要な起床時刻に合わせてアラームを設定する方法も考えられます。
ただし、アラームを遅くすることで寝坊する不安が強くなる人もいるため、無理に変更する必要はありません。
② 目覚ましを手の届かない場所に置く
枕元にスマートフォンがあると、布団に入ったままアラームを止められます。
そこで、立ち上がらないと手が届かない場所に置く方法があります。
立ち上がる動作をきっかけに、布団から出る流れを作るという考え方です。
ただし、高い棚や不安定な場所に置くと、落下や破損の危険があります。
安全で安定した場所を選びましょう。
③ そもそも睡眠時間が足りているか確認する
毎朝のように強い眠気がある場合には、起き方だけでなく、睡眠時間にも目を向けてみましょう。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人について、6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが勧められています。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。
毎朝何度も二度寝してしまう場合には、数日間の就寝・起床時刻を記録すると、睡眠不足の傾向に気づけることがあります。
私が実際に試した、ちょっと変わった二度寝対策
実は私も以前、朝の「あと5分」に悩まされることがありました。
特に冬です。
私の家はセントラルヒーティングで、各部屋の温度が一日中ほぼ一定に保たれています。
それでも、朝になると布団から出たくありません。
部屋が寒いからというより、布団の中が心地よいのです。
そこで、ある方法を考えました。
スマートフォンを枕元ではなく、立ち上がらなければ届かない場所に置く。
実際、以前はカーテンレールの上に置いたこともあります。
起き上がる。
手を伸ばす。
アラームを止める。
そのままカーテンを開ける。
これを朝の一連の動作にしてみたのです。
ただし、カーテンレールの上は落下の危険があるため、おすすめできません。
同じ方法を試すなら、安定した家具の上など、安全な場所がよいと思います。
もちろん、これは私自身の経験で、すべての人に同じ効果があるとは限りません。
それでも、布団の中で何度もアラームを止めてしまう人には、置き場所を変えるという発想も一つの選択肢になるかもしれません。
まとめ|「あと5分」の正体は、単なる怠けではない
朝の「あと5分」が10分、20分になる背景には、目覚め直後の睡眠慣性や睡眠欲求、そして眠り直せる環境などが関係していると考えられます。
今回のポイントを振り返ってみましょう。
- 目覚ましが鳴っても、頭は瞬時に完全な覚醒状態になるとは限らない
- 睡眠不足があると、起きても再び眠りたくなる場合がある
- 「あと5分」を繰り返せば、結果として長い二度寝になる
- 二度寝やスヌーズは、必ず悪いとは言い切れない
- スヌーズの研究では、目覚めへの影響について異なる結果も報告されている
- 明け方の睡眠ではレム睡眠が長くなり、夢を覚えている場合がある
そして、二度寝をしたくなる理由は、一つとは限りません。
睡眠が足りない日もあれば、十分に眠っていても布団から出たくない日もあるでしょう。
ただし、毎朝のように強い眠気が続いたり、十分に眠っているはずなのに日中の生活に支障が出たりする場合は、睡眠習慣だけでは説明できないこともあります。
二度寝をしたかどうかだけではなく、普段どのくらい眠れていて、起きたあとにどう感じるか。
そこに目を向けると、朝の自分の状態が少し違って見えてくるかもしれません。
明日の朝、目覚ましが鳴ったとき。
また「あと5分だけ……」と思ったら、
なぜ自分は今、もう少し眠りたいのだろう?
そんな疑問を持ってみるのも面白いかもしれません。
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▷睡眠慣性とは?朝起きても眠い原因と今日からできる改善法
▷ソーシャルジェットラグとは?休日の寝だめが危険と言われる理由
▷睡眠負債とは?最新研究からわかる健康へのリスク
参考資料
・厚生労働省|健康づくりのための睡眠ガイド2023
・厚生労働省 e-ヘルスネット|眠りのメカニズム
・日本睡眠学会|ノンレム睡眠とレム睡眠
・広島大学の研究者ら|スヌーズ機能と睡眠慣性に関する研究(2022年・英文)
・スウェーデンの研究|スヌーズ機能が睡眠や認知機能に与える影響(2023年発表・英文)

