「昨日はぐっすり眠れた。」
「夢をたくさん見た気がする。」
「そもそも、寝ている間って何が起きているんだろう?」
私たちは毎日眠っていますが、その数時間の中で何が起きているのかを意識する機会は意外と少ないものです。
実は、睡眠は朝までずっと同じ状態が続いているわけではありません。
大きく分けると、
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」
という2つの状態を繰り返しながら朝を迎えます。
よく、
「レム睡眠=夢を見る睡眠」
「ノンレム睡眠=深い睡眠」
と説明されます。
大まかなイメージとしては間違いではありませんが、実際の睡眠はもう少し複雑です。
例えば、夢はレム睡眠だけでなくノンレム睡眠でも報告されています。
また、ノンレム睡眠にも浅い段階から深い段階まであります。
この記事では、
「結局、レム睡眠とノンレム睡眠は何が違うの?」
という疑問を中心に、睡眠中に起きていることをできるだけシンプルに見ていきます。
まずはレム睡眠とノンレム睡眠の違いを一目で確認
細かい話に入る前に、大まかな違いを整理してみましょう。
| 項目 | ノンレム睡眠 | レム睡眠 |
| 睡眠の段階 | N1・N2・N3の3段階 | REMという1つの段階 |
| 脳の活動 | 段階によって変化する | 覚醒時に似た活動がみられる |
| 眼球 | 急速眼球運動はみられない | 眼球が素早く動く |
| 筋肉 | 段階によって活動が低下する | 多くの骨格筋の活動が強く抑えられる |
| 夢 | 見ることがある | 鮮明な夢が多く報告される |
| 一晩の中で | 前半に深いN3が多い | 後半になるほど長くなる傾向がある |
こうして見ると、
「どちらが深いか」だけでは説明できない
ことが分かります。
では、それぞれをもう少し詳しく見てみましょう。
ノンレム睡眠とは?実は3つの段階に分かれている
ノンレム睡眠は英語の「Non-Rapid Eye Movement Sleep」のことで、現在は一般的に、
・N1
・N2
・N3
という3つの段階に分けられます。
「ノンレム睡眠=全部深い睡眠」
ではありません。
ここは意外と勘違いされやすいところです。
N1|眠り始めの浅い睡眠
N1は、起きている状態から睡眠へ移っていく最初の段階です。
「うとうとしてきた」
という状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
完全に目が覚めている状態から、少しずつ外からの刺激に反応しにくくなっていきます。
N2|一晩の中でも多く現れる睡眠
N1からさらに眠りが進むとN2へ移ります。
N2では、すでにしっかり睡眠に入っています。
睡眠中の脳波を調べると、「睡眠紡錘波」など特徴的な活動が確認される段階でもあります。
名前だけ聞くと難しそうですが、
浅い眠りから、より安定した睡眠へ移っていく段階
と考えると分かりやすいでしょう。
N3|いわゆる「深い睡眠」
N3は「徐波睡眠」や「深睡眠」とも呼ばれます。
睡眠中の脳波には、ゆっくりとした大きな波が多く現れます。
深いノンレム睡眠は、一晩を通して均等に現れるわけではありません。
一般的には、
夜の前半ほどN3が多く、朝に近づくにつれて少なくなっていきます。
そのため、「最初の数時間には深い睡眠が多い」という説明はできます。
ただし、
「最初の90分だけが特別」
「最初の90分を逃したら質の良い睡眠が取れない」
という単純な仕組みではありません。
睡眠そのものの基本的な仕組みについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
レム睡眠とは?眠っているのに脳は活発に動いている
レム睡眠の「REM」は、
Rapid Eye Movement
の頭文字を取った言葉です。
日本語では「急速眼球運動」と訳されます。
名前の通り、レム睡眠中には閉じたまぶたの下で眼球が素早く動くことがあります。
さらに興味深いのが脳の活動です。
レム睡眠中の脳活動には、起きているときと似た特徴がみられます。
その一方で、多くの骨格筋の活動は強く抑えられています。
つまり、
脳は比較的活発なのに、体は大きく動きにくい。
レム睡眠には、そんな少し不思議な特徴があります。
昔から、
「レム睡眠=夢を見る時間」
というイメージがありますが、これは少しだけ補足が必要です。
レム睡眠では鮮明な夢が多く報告されますが、夢そのものはノンレム睡眠でも起こります。
夢については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
ノンレム睡眠から始まり、レム睡眠へ移っていく
では、実際の一晩を見てみましょう。
眠り始めると、一般的にはまずノンレム睡眠に入ります。
そこから、
N1
↓
N2
↓
N3
↓
再び浅い睡眠へ
↓
レム睡眠
というように睡眠の段階が変化していきます。
その後、またノンレム睡眠へ戻り、同じような流れを繰り返します。
ただし、毎回まったく同じ順番・同じ長さになるわけではありません。
1回の睡眠周期は、一般的に約80~100分が目安とされ、一晩に4~6回程度繰り返されます。
よく「睡眠は90分周期」と言われますが、
毎回きっちり90分ではありません。
人によっても違いますし、同じ人でも一晩の中で変化します。
そのため、
「90分の倍数で起きれば必ずスッキリする」
という単純な法則として考える必要はありません。
夜の前半と後半では睡眠の中身が変わる
さらに面白いのが、一晩の前半と後半では睡眠の割合が変わっていくことです。
夜の前半では、
深いノンレム睡眠(N3)が多くなります。
一方、朝に近づくにつれて、
レム睡眠が長くなる傾向があります。
つまり、一晩の睡眠をざっくり表すと、
前半 → 深いノンレム睡眠が多い
後半 → レム睡眠が増えてくる
という流れになります。
朝方に夢を覚えていることが多いと感じる人がいるのも、朝に近づくほどレム睡眠が長くなることと関係している可能性があります。
ただし、
「朝方の夢だけを覚えて、夜の前半では夢を見ない」
という意味ではありません。
夢を覚えているかどうかには、目覚めるタイミングなども関係します。
「夢を見た=眠りが浅かった」ではない
「昨日は夢をたくさん見たから、眠りが浅かったのかな?」
そう考えたことがある人もいるかもしれません。
しかし、
夢を覚えていることだけで睡眠の質を判断することはできません。
そもそも夢はレム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠でも報告されています。
また、
「夢を見なかった」
と思っていても、単に起床後に覚えていないこともあります。
さらに、夢にどのような役割があるのかについても、現在まで完全には解明されていません。
記憶や感情との関係について研究されていますが、
「夢を見る目的はこれです」
と一つに決まっているわけではないのです。
眠っている間に毎晩起きている現象なのに、その目的がまだ完全には分かっていない。
夢は、睡眠研究の中でも特に興味深いテーマの一つです。
レム睡眠とノンレム睡眠は、どちらが大切?
ここまで読むと、
「結局、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要なの?」
という疑問が出てきます。
答えは、
どちらか一方を選ぶものではありません。
レム睡眠もノンレム睡眠も、通常の睡眠を構成する一部分です。
以前は、
「ノンレム睡眠=体を休ませる」
「レム睡眠=脳を休ませる」
などと単純に説明されることもありました。
しかし、実際にはそれほどきれいに役割を分けられるわけではありません。
睡眠中には、脳や体でさまざまな変化が同時に起きています。
そのため、
「深い睡眠だけ増やせばいい」
「レム睡眠を増やせばいい」
と考えるより、一晩を通して自然な睡眠を確保することの方が分かりやすいでしょう。
よくある「レム睡眠・ノンレム睡眠」の勘違い
ここまでの内容を、よくあるイメージと比べてみましょう。
| よくあるイメージ | 実際は? |
| レム睡眠のときだけ夢を見る | ノンレム睡眠でも夢は報告される |
| ノンレム睡眠は全部深い | N1・N2・N3の3段階がある |
| 睡眠は必ず90分周期 | 約80~100分が目安で一定ではない |
| 夢を見たら睡眠が浅い | 夢を覚えているだけでは判断できない |
| 深い睡眠だけ多ければいい | レム・ノンレムの両方が通常の睡眠を構成する |
| 8時間眠れば十分 | 必要な睡眠時間には個人差がある |
こうして見ると、
普段何となく聞いていた睡眠の常識の中にも、少し単純化されて広まっているものがあることが分かります。
スマートウォッチの「深い睡眠30分」は気にした方がいい?
最近では、スマートウォッチやスマートリングで、
「深い睡眠 1時間12分」
「レム睡眠 1時間48分」
などと表示されることがあります。
数字が表示されると、
「昨日は深い睡眠が少なかった」
「レム睡眠をもっと増やした方がいいのかな」
と気になりますよね。
ただし、ここには一つ注意点があります。
病院などで睡眠段階を調べる場合は、脳波や眼球運動など複数の情報を使って判定します。
一方、一般向けのウェアラブル端末では、体の動きや心拍などからアルゴリズムによって睡眠段階を推定しているものが多くあります。
そのため、
表示された睡眠段階を「実際の睡眠そのもの」と考えるのではなく、一つの目安として見る
くらいが分かりやすいでしょう。
「昨日は深い睡眠が42分だった!!」
と、一晩の数字だけで睡眠の良し悪しを決める必要はありません。
一般向けのウェアラブル端末による睡眠段階の推定制度は、機種やアルゴリズムによって異なります。
そのため、「最近、寝る時間が遅くなってるな」「以前より睡眠時間が短くなっているな」など、自分の睡眠の傾向を振り返るための一つの参考として見ると分かりやすいでしょう。
これは、今だからこそ知っておきたい睡眠のポイントかもしれません。
「8時間寝れば大丈夫」とは限らない
睡眠の話になると、
「人間は8時間寝るのが理想」
という言葉をよく聞きます。
しかし、全員が必ず8時間必要という決まりがあるわけではありません。
American Academy of Sleep Medicine(AASM)は、成人について日常的に7時間以上の睡眠を取ることを推奨しています。
一方で、必要な睡眠時間には個人差があります。
そのため、
「8時間ぴったり眠らなければならない」
と考えるより、
まず十分な睡眠時間を確保することが基本になります。
そして、その睡眠時間の中でノンレム睡眠とレム睡眠が自然に繰り返されています。
レム睡眠や深い睡眠を自分で増やす必要はない
睡眠について詳しく知ると、
「深い睡眠を増やす方法は?」
「レム睡眠を増やす方法は?」
と気になるかもしれません。
しかし、毎晩自分で睡眠段階の割合を調節することはできません。
まず意識しやすいのは、
・必要な睡眠時間を削らない
・起床時刻を大きく乱さない
・寝る直前まで夜更かしにつながる行動を続けない
・寝室を眠りやすい環境にしておく
といった基本的な部分です。
睡眠を細かくコントロールしようとするより、
眠るための時間をきちんと確保する。
まずはこちらの方がシンプルです。
寝る前のスマートフォンについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説
知っているとちょっと面白い「睡眠の見方」
レム睡眠とノンレム睡眠について知ると、普段の睡眠の見え方も少し変わります。
例えば、
「夢を見たから眠りが浅かった」
ではなく、
「朝方のレム睡眠から目覚めたから、夢を覚えていたのかもしれない」
と考えられます。
スマートウォッチに、
「深い睡眠が少ない」
と表示されても、
「端末が推定した数字だから、一晩だけで判断しなくてもいいな」
と考えられます。
さらに、
「90分周期だから6時間眠ればちょうどいい」
ではなく、
「そもそも睡眠周期は毎回90分ぴったりではない」
ことも分かります。
睡眠の仕組みを知ると、毎晩の数字や「90分周期」といった情報だけに振り回されず、睡眠を少し違った視点から見られるようになります。
まとめ|私たちは一晩の中で何度も違う睡眠を経験している
私たちは眠ってから朝まで、ずっと同じ状態で眠っているわけではありません。
ノンレム睡眠とレム睡眠を行き来しながら、一晩を過ごしています。
ノンレム睡眠にはN1・N2・N3という3つの段階があり、その中でもN3がいわゆる深い睡眠です。
レム睡眠では眼球が素早く動き、脳には覚醒時に似た活動がみられます。
また、
夜の前半は深いノンレム睡眠が多く、後半になるとレム睡眠が長くなる傾向があります。
睡眠周期は一般的に約80~100分で、一晩に4~6回程度繰り返されます。
そして大切なのは、
レム睡眠とノンレム睡眠のどちらが優秀なのかを比べる必要はない
ということです。
どちらも、私たちが毎晩経験している自然な睡眠の一部です。
毎日当たり前のように眠っていますが、その間にはこれだけ複雑な変化が繰り返されています。
そう考えると、「眠る」という行為も少し違って見えてくるのではないでしょうか。
あわせて読みたい
▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説

参考文献
▷ NHLBI|睡眠の段階とサイクル
▷ NINDS|睡眠の仕組みと基礎知識
▷ AASM|成人に必要な睡眠時間
▷ AASM|スマートウォッチなどの睡眠計測について


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