「昨日、寝言すごかったよ。」
朝起きて、家族からそう言われて驚いたことはありませんか?
本人にはまったく記憶がないのに、眠っている間は普通に話していたというのです。
一方で、
「私は寝言なんて言ったことがない」
という人もいます。
では、寝言を言う人と言わない人には、何か違いがあるのでしょうか。
結論からいうと、「このタイプの人は必ず寝言を言う」という明確な違いは分かっていません。
寝言は、レム睡眠でもノンレム睡眠でも起こることがあり、頻度にも大きな個人差があります。
また、自分の寝言を本人が聞くことはほとんどありません。
「私は寝言を言わない」と思っていても、単に誰にも聞かれていないだけという可能性もあります。
この記事では、
・寝言とはどんな現象なのか
・寝言を言う人と言わない人に違いはあるのか
・寝言と夢にはどんな関係があるのか
・「寝言に返事をしてはいけない」は本当なのか
・寝言について現在どこまで分かっているのか
を、睡眠研究をもとに分かりやすく紹介します。
寝言とはどんな現象?
寝言とは、眠っている間に本人の意思とは関係なく、声や言葉を発する現象です。
英語では「Sleep Talking」や「Somniloquy」と呼ばれています。
寝言といっても、すべてがはっきりした文章になるわけではありません。
たとえば、
・「うーん」「あー」といった声
・意味の分からない言葉
・短い単語
・誰かと話しているような文章
・笑い声
・叫び声
など、さまざまです。
海外の研究では、寝言の中には言葉として聞き取れるものだけでなく、つぶやき、叫び、笑いなども多く含まれることが報告されています。
そして興味深いのが、寝言は特定の睡眠段階だけで起こるわけではないという点です。

人の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠を一晩の中で繰り返しています。
睡眠そのものの仕組みを先に知っておくと、寝言についても理解しやすくなります。
睡眠の基本についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
寝言を言う人と言わない人の違いは?
ここが一番気になるところでしょう。
寝言をよく言う人と、ほとんど言わない人を分ける明確な特徴は、現在も十分には分かっていません。
寝言についての研究そのものが、睡眠時間や不眠などの研究と比べるとまだ限られているためです。
つまり、
「寝言を言う人は眠りが浅い」
「ストレスが多い人ほど寝言を言う」
「疲れているから寝言が増える」
と単純に決めることはできません。
一方で、研究からいくつか興味深いことは分かってきています。
寝言について現在分かっていること
| よく聞く話 | 現在わかっていること |
| 寝言はレム睡眠だけで起こる | ノンレム睡眠でもレム睡眠でも確認されている |
| 寝言を言う人は眠りが浅い | それだけでは判断できない |
| 寝言は必ず夢の内容 | 夢と関連する場合もあるが、すべてとは限らない |
| 本人は寝言を覚えている | 本人が気づいていないことも多い |
| 寝言=病気 | 寝言だけでそう判断することはできない |
| 寝言を言わない人もいる | 誰にも聞かれていないだけの可能性もある |
本人が知らないだけかもしれない
寝言の大きな特徴は、本人が眠っている間に起きることです。
一人暮らしであれば、自分が寝言を言っているかどうかを知る機会そのものがほとんどありません。
数秒だけ小さくつぶやいたとしても、誰にも気づかれないでしょう。
そのため、
「寝言を言う人」
と
「寝言を言わない人」
が完全に分かれているというより、
「寝言を聞かれたことがある人」と「聞かれたことがない人」
という違いも含まれていると考えたほうが分かりやすいでしょう。
寝言の出方には個人差がある
寝言にはかなりの個人差があります。
たまに一言だけ話す人もいれば、家族から頻繁に指摘される人もいます。
また、同じ人でも毎晩同じように寝言を言うとは限りません。
寝言については研究がまだ十分ではなく、なぜ頻度に大きな違いが生まれるのかについても、分かっていない部分が残っています。
この「まだよく分かっていない」という点も、寝言のおもしろいところです。
寝言を言っているとき脳では何が起きている?
眠っているからといって、脳の活動が完全に止まっているわけではありません。
睡眠中にも脳ではさまざまな活動が続いています。
特に興味深いのが「言葉」です。
私たちは普段、
頭の中で言葉を考える
↓
話す内容を組み立てる
↓
口や舌を動かす
↓
声として発する
という複雑な処理をほとんど意識せず行っています。
寝言では、眠っている状態にもかかわらず、その一部が声として外に現れます。
2022年に発表された研究では、言葉として発せられた寝言の直前に、覚醒時の言語処理と共通する可能性のある脳活動が報告されています。
ただし、
「脳のこの部分が動いたから寝言になる」
と単純に説明できる段階ではありません。

寝言は、眠っている脳の中で行われている処理を外から観察できる、珍しい現象ともいえます。
寝言は夢の内容をそのまま話しているの?
「寝言って、夢の中で話している言葉なんじゃないの?」
そう思う人も多いでしょう。
実際、寝言と夢の内容が関連していると考えられる例はあります。
しかし、
寝言=夢のセリフをそのまま声に出している
とは限りません。
寝言はレム睡眠だけでなくノンレム睡眠でも起こります。
さらに、夢そのものもレム睡眠だけで起こるわけではありません。
そのため、
夢を見る
↓
夢の中で話す
↓
その言葉がそのまま寝言になる
という単純な仕組みでは説明できないのです。
寝言と夢の関係は、現在も研究が続いている分野です。
夢そのものについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
「寝言に返事をしてはいけない」は本当?
日本では昔から、
「寝言に返事をしてはいけない」
という言い伝えがあります。
「魂が戻れなくなる」
「寿命が縮む」
など、地域や家庭によっていろいろな話があります。
しかし、寝言に返事をしたことでそのようなことが起こるという科学的な根拠は確認されていません。
では、寝言を聞いたらどうすればいいのでしょうか。
普通の寝言であれば、わざわざ起こしたり、会話を続けようとしたりせず、そのまま眠らせておけばよいでしょう。
寝言そのものより、
「返事をしたら何を答えるんだろう?」
と聞いている側のほうが気になってしまうかもしれません。
寝言で秘密をしゃべってしまうことはある?
映画やドラマでは、
「寝言で秘密を全部しゃべってしまった」
という場面があります。
実際の寝言では、意味のある文章が出ることもあります。
一方で、研究では、
・つぶやき
・叫び
・笑い
・意味を取りにくい発声
なども多く確認されています。
つまり、寝言は必ずしも筋の通った会話になるわけではありません。
たとえ人の名前や単語が出てきたとしても、その一言だけで本人が実際に考えていることまで判断することはできません。
寝言を「眠っている本人への尋問」のように使うのは難しそうです。
寝言と「睡眠中に動くこと」は別に考えよう
寝言だけで終わる場合と、
寝ながら大きく体を動かす場合は、少し分けて考える必要があります。
日本睡眠学会や国立精神・神経医療研究センターでは、睡眠中に起こるさまざまな行動を「睡眠時随伴症」として説明しています。
たとえば、
・睡眠中に歩き回る
・突然大きな声を出す
・夢に合わせるように手足を大きく動かす
といった現象があります。
レム睡眠行動障害では、大きな寝言とともに夢に合わせたような動きが現れ、本人や一緒に寝ている人がケガをすることもあります。
ここで大切なのは、
普通の寝言だけを聞いて、こうした睡眠障害だと判断することはできない
ということです。
寝言を聞いたときに見るポイント
| 様子 | 見るポイント |
|---|---|
| 小さな寝言だけ | そのまま眠っているか |
| 短い言葉を話す | 頻度や内容に大きな変化がないか |
| 大声を出す | 体の大きな動きを伴っていないか |
| 手足を激しく動かす | 本人や周囲に危険がないか |
| ベッドから落ちそうになる | 安全な睡眠環境になっているか |
寝言そのものよりも、激しい動きやケガにつながる行動を伴っているかを区別して見ると分かりやすいでしょう。
「最近、寝言が増えた気がする」ときは?
寝言だけを狙って完全になくす方法が確立されているわけではありません。
そのため、
「寝言を治そう」
と考えるより、まず普段の睡眠を振り返ってみるほうが現実的です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、良い睡眠のために、
・必要な睡眠時間を確保する
・睡眠環境を整える
・適度に体を動かす
・就寝前にリラックスする
・カフェインやアルコールなどのとり方に気をつける
といったポイントが紹介されています。
これらは「寝言を止める方法」ではありません。
あくまで、普段の睡眠を整えるための基本です。
睡眠時間を振り返る
「最近、寝る時間が遅くなっていないかな?」
「以前より睡眠時間が短くなっていないかな?」
まずはこの程度の確認で十分です。
毎日の睡眠時間が大きく変わっている場合は、生活リズムを振り返るきっかけになります。
寝る前の時間を見直す
布団に入る直前まで、
・仕事
・ゲーム
・動画
・SNS
などを続けている人も多いでしょう。
スマートフォンの場合は光だけでなく、動画やSNSを見続けることで就寝時間そのものが遅くなることもあります。
寝る前のスマホについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説
寝酒で眠ろうとしない
「お酒を飲むとすぐ眠れる」
という人もいます。
アルコールには一時的に寝つきを促す作用がありますが、厚生労働省の睡眠ガイドでは、睡眠後半の眠りの質を悪化させ、中途覚醒が増える可能性が示されています。
そのため、眠るためのお酒を習慣にするのではなく、普段の睡眠環境そのものを整えるという考え方が分かりやすいでしょう。
睡眠環境や生活習慣をまとめて見直したい方はこちらも参考にしてください。
寝言を記録してみると意外と面白い
家族に寝言を言う人がいるなら、
「何を話したか」
だけではなく、
・何時ごろだったか
・一言だけだったか
・会話のようだったか
・笑っていたか
・体も動いていたか
などを覚えておくと、意外な違いに気づくかもしれません。
たとえば、
「毎晩しゃべっていると思っていたけど、実際は月に数回だった」
「文章だと思っていたけど、よく聞くと意味のない言葉だった」
ということもあるでしょう。
寝言は眠っている本人より、隣で聞いている人のほうが詳しいという少し不思議な現象です。

寝言について分かっていないことも多い
寝言は身近な現象ですが、実は研究にはまだ分かっていないことが少なくありません。
2019年のレビュー論文でも、寝言についての研究は断片的で、さらなる研究が必要だとされています。
現在研究されているのは、
・なぜ睡眠中に言語が現れるのか
・夢と寝言はどこまで一致するのか
・脳の言語処理とどのような関係があるのか
・なぜ人によって寝言の頻度が違うのか
といったテーマです。
普段なら、眠っている人が何を考えているのか外から知ることはできません。
しかし寝言では、眠っている脳から突然「言葉」が外に出てきます。
だからこそ寝言は、睡眠中の脳を研究する手がかりの一つとしても注目されています。
まとめ
寝言を言う人と言わない人を分ける、明確な特徴があるわけではありません。
現在分かっているポイントをまとめると、
・寝言は本人の意思とは関係なく起こる
・レム睡眠でもノンレム睡眠でも起こる
・寝言の頻度には個人差がある
・本人が寝言に気づいていないことも多い
・寝言が必ず夢の内容とは限らない
・寝言だけで健康状態を判断することはできない
ということになります。
何より興味深いのは、
眠っている脳から、突然「言葉」が出てくる
ということでしょう。
なぜ眠っているのに言葉を作ることができるのか。
なぜ意味のある文章になることがあるのか。
なぜ本人には記憶がないのか。
身近な寝言には、まだ完全には解明されていない睡眠の不思議が詰まっています。
今度家族の寝言を聞いたら、
「また寝言を言ってる」
で終わらせず、
「眠っている脳では今、何が起きているんだろう?」
と考えてみると、少し違って聞こえるかもしれません。
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参考・出典
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
・日本睡眠学会「睡眠障害の基礎知識」
・国立精神・神経医療研究センター「睡眠時随伴症」
・寝言に関する研究レビュー|PubMed
・睡眠中の発話に関する研究|PubMed
・睡眠中の言語的発話と脳活動に関する研究(2022)|PubMed


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