寝る前に勉強すると、記憶は本当に強くなる?睡眠が記憶を強くする仕組み

睡眠

「勉強したら、すぐ寝たほうが覚えやすい」

そんな話を聞いたことはありませんか?

結論からいうと、寝る直前に勉強すれば必ず記憶力が上がる、とは言い切れません。

ただし、学習したあとに睡眠をとることが、覚えた情報を安定させる「記憶の固定」に関係していることは、これまで多くの研究で調べられています。

つまり大切なのは、

寝る前に勉強することそのものより、「学ぶ→眠る」という流れです。

この記事では、

・睡眠中に記憶はどう変化するのか
・なぜ「寝る前の勉強」が注目されるのか
・寝る前にどんな勉強をするとよいのか

を、できるだけシンプルに見ていきます。

覚えることと、記憶に残ることは同じではない

英単語を20個覚えた直後なら、かなり答えられる。

ところが翌日になると、

「あれ、この単語なんだっけ?」

となることがあります。

これは不思議なことではありません。

学習した直後の記憶は、そのまま永久に保存されるわけではなく、その後さまざまな変化を受けます。

そこで関係するのが記憶の固定です。

簡単にすると、

学ぶ → 記憶が作られる → その後に安定していく

という流れです。

そして睡眠は、この「安定していく過程」に関係していると考えられています。

 

眠っている間も、脳は完全に止まっていない

睡眠は「脳が何もしていない時間」ではありません。

睡眠中にも脳ではさまざまな活動が続いています。

特に記憶研究では、学習時に活動した神経回路に関連する活動が、睡眠中に再び現れる「再活性化」が研究されています。

日本の総説でも、睡眠中に海馬と大脳皮質の活動が連携し、記憶の固定に関係する可能性が紹介されています。

また、睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があり、それぞれが記憶の定着や変化にどう関わるのか、現在も研究が続いています。

睡眠の仕組みについて詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。

▷レム睡眠・ノンレム睡眠の違いとは?眠っている間に脳で起きている驚きの秘密

「寝る前に勉強すると覚えやすい」は本当?

ここは少し分けて考える必要があります。

よく聞く話 現在の考え方
寝る前に覚えれば必ず記憶に残る 必ず記憶に残るとは言い切れない
学習後に眠ると覚えたことが定着しやすい 睡眠は記憶の固定に関係すると考えられている
徹夜すれば勉強時間が増えるので有利 睡眠不足は翌日の集中力や学習効率に影響することがある
睡眠中は脳も完全に休んでいる 睡眠中も記憶に関係する脳活動が続いている
復習は何度も読み直せばいい 読み直すだけでなく、思い出す練習も役立つ

つまり、

「寝る前」という時間帯に特別な力があるというより、学習のあとに睡眠を挟めることに意味がある

と考えたほうが分かりやすいでしょう。

「あと1時間だけ勉強する」で睡眠を削らない

試験前になると、

「あと1時間だけやろう」

と思って勉強を続け、気づけば深夜になっていることがあります。

しかし、寝る前の勉強を優先するあまり睡眠時間そのものを削ってしまっては、本末転倒です。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、年齢や個人差を踏まえながら、必要な睡眠時間を確保することが示されています。

ですから、

夜更かしして暗記量を増やすことより、適度なところで切り上げて眠る

という選択肢もあります。

睡眠そのものについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。

▷睡眠とは何か?健康に欠かせない役割と最新研究

寝る前は「もう一度読む」だけで終わらせない

寝る前に復習するなら、取り入れやすい方法の一つが、

一度本を閉じて思い出してみること

です。

たとえば英単語を20個勉強したなら、もう一度最初から読む前に、

「何個思い出せるだろう?」

と試してみます。

このように、学んだ情報を自分の頭から取り出す方法は「想起練習」と呼ばれ、記憶との関係が研究されています。

 

私がよく使っている「人に教えるつもりで覚える」方法

ここからは研究結果ではなく、私自身が物事を覚えるときによく使っている方法です。

それは、

「誰かに説明するとしたら、どう説明するか?」

を頭の中で考えることです。

特に、相手がその内容をまったく知らないと想像します。

難しい言葉を使わず、

「これなら疑問が残らないだろうか?」

と何度も説明し直します。

すると、

・自分でも理解していなかった部分
・説明できない部分
・なくても意味が通じる余計な情報

が見つかります。

最終的には、かなり短い言葉で説明できるようになります。

誰にでも同じ効果があるとは言えませんが、私は「覚えたつもり」を確認する方法として使っています。

寝る前にやるなら、こんな流れもある

寝る前に復習するなら、たとえば次のような流れにするとシンプルです。

以下は、取り入れやすくするための一例です。

タイミング やること
寝る前の10~15分 その日に勉強した内容を軽く復習する
最後の5分 本やノートを閉じて、覚えた内容を思い出す
思い出せなかった部分 その部分だけ確認する
復習が終わったら 勉強を切り上げて眠る
翌朝 何も見ずに、もう一度思い出してみる

ポイントは、新しい内容を大量に詰め込むことではありません。

その日に覚えたことを一度取り出してから眠る。

これなら睡眠時間も圧迫しにくくなります。

寝る前のスマホには注意

勉強が終わったあと、

「少しだけSNSを見よう」

とスマートフォンを触り始め、そのまま寝る時間が遅くなることもあります。

せっかく勉強を早めに終えても、スマートフォンで就寝時刻が遅くなってしまえば、睡眠時間を確保しにくくなります。

寝る前のスマートフォンと睡眠についてはこちらで詳しく紹介しています。

▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説

結局、寝る前に勉強すると記憶は強くなる?

結論をまとめます。

「寝る前に勉強すれば必ず覚えられる」というわけではありません。

一方で、睡眠が学習した記憶の固定に関係することは、これまでの研究で繰り返し調べられています。

そのため、

学ぶ
↓
思い出す
↓
しっかり眠る
↓
翌朝もう一度思い出す

という流れは、勉強方法を考えるうえで参考になります。

特に避けたいのは、

「記憶に残したいから寝る前まで勉強する」

つもりが、

「勉強しすぎて睡眠時間を削る」

ことです。

睡眠は勉強を中断しているだけの時間ではありません。

覚えた情報を脳の中で安定させていく過程まで含めて、学習と考える。

そう考えると、

「今日はここまで勉強したから、あとは眠ろう」

という判断もしやすくなるのではないでしょうか。

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▷レム睡眠・ノンレム睡眠の違いとは?眠っている間に脳で起きている驚きの秘密

▷睡眠とは何か?健康に欠かせない役割と最新研究

▷寝る前のスマホは睡眠に悪い?ブルーライトだけではない影響を研究から解説

参考・出典

・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

・田村了以「睡眠と記憶固定―海馬と皮質のダイアログ―」心理学評論

・渡辺晃ほか「系列学習によって形成された表象に記憶の固定化がもたらす変化」認知心理学研究

・甲斐田幸佐ほか「ノンレム睡眠とレム睡眠が記憶の定着と変容に果たす役割検証」日本心理学会

・齋藤玲・邑本俊亮「学習リテラシー―学習方法としての想起練習に着目して―」読書科学

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