なぜ眠っている時間は「あっという間」に感じるのか?起きたときに気づく睡眠と時間の不思議

睡眠

「えっ、もう朝?」

夜、布団に入って目を閉じた。

そして次に気づいたときには、カーテンの向こうが明るくなっている。

時計を見ると、7時間も経っている。

それなのに、自分の感覚では、

「さっき寝たばかりなのに……」

と思うことがあります。

起きている7時間なら、

仕事をする。

食事をする。

スマホを見る。

人と話す。

移動する。

など、かなり多くの出来事があります。

ところが眠っている7時間は、

「目を閉じた」

↓

「朝になった」

くらいの感覚しか残っていないことがあります。

なぜ、同じ7時間なのにこれほど感じ方が違うのでしょうか。

結論から言うと、眠っている時間が「あっという間」に感じる理由は、一つだけではありません。

睡眠中は、起きているときに比べて外からの刺激への反応が少なくなります。

さらに、時計を確認したり、出来事を連続して記憶したりする機会も少なくなります。

そのため、朝になって振り返ったときに、

「寝る前の記憶」

と

「起きた瞬間の記憶」

が近く感じられることがあります。

ただし、

「眠っている間は時間感覚が完全になくなる」

と単純に言えるわけではありません。

日本の研究では、睡眠中でもある程度、時間を判断できる可能性が示されています。

この記事では、

・そもそも時間を「長い・短い」と感じるのはなぜか
・眠っている間に何が変わるのか
・なぜ「寝たと思ったら朝」になるのか
・夜中に何度も起きると夜が長く感じるのはなぜか
・夢の中の時間は現実と同じなのか

という順番で、睡眠と時間の不思議を見ていきます。

そもそも「時計の時間」と「感じる時間」は違う

まず知っておきたいのが、

時計が測る時間と、私たちが感じる時間は同じではない

ということです。

たとえば、何もせずに10分待っていると、

「まだ10分?」

と長く感じることがあります。

一方、好きな動画やゲームに夢中になっていると、

「もう30分経ったの?」

と驚くこともあります。

時計の針は同じ速さで進んでいます。

違うのは、私たちの感じ方です。

時間の感じ方には、

・何に注意を向けていたか
・どんな出来事があったか
・どれくらい記憶に残っているか
・どんな感情だったか

など、さまざまな要素が関係します。

つまり、私たちには時計とは別に、

「主観的な時間」

があるのです。

同じ時間でも感じ方は変わる

状況 実際の時間 感じ方
何もせず待っている 30分 長く感じやすい
好きなことに集中している 30分 短く感じやすい
眠っている 7時間 一瞬だったように感じることがある
夜中に何度も目が覚める 7時間 長い夜だったと感じることがある

起きている時間には「時間の目印」がたくさんある

朝起きてから夜までを思い出してみてください。

7時に起きる。

朝食を食べる。

仕事を始める。

昼食を食べる。

午後の仕事をする。

買い物をする。

夕食を食べる。

テレビを見る。

お風呂に入る。

布団に入る。

一日の中には、たくさんの出来事があります。

さらに、

時計を見る。

スマホを見る。

外が暗くなる。

人と話す。

食事をする。

テレビ番組が変わる。

といった変化もあります。

この記事では分かりやすく、こうしたものを「時間の目印」と呼ぶことにします。

これは医学用語ではありません。

時間感覚をイメージしやすくするための、この記事独自の表現です。

眠ると「時間の目印」が少なくなる

眠ると状況は大きく変わります。

睡眠中も脳が完全に停止しているわけではありません。

睡眠中にも、外から入る音などの情報が処理されることが研究されています。

ただし、起きているときと比べると、外からの刺激への反応は低下します。

さらに通常は、

「1時になった」

「2時になった」

「3時になった」

と毎時間時計を確認することもありません。

そのため、朝起きて振り返ったときに残っている「時間の目印」が、起きている時間より少なくなることがあります。

起きている時間と眠っている時間の違い


同じ7時間でも、

起きている時間には多くの出来事があります。

一方で、睡眠中について朝に思い出せることが少なければ、

「いつの間に7時間も経ったんだろう?」

と感じやすくなるわけです。

「寝る前」と「朝」が直接つながったように感じる

たとえば、夜11時30分。

スマホを置く。

電気を消す。

枕に頭を置く。

ここまでは覚えています。

そして次に鮮明に覚えている場面が、

朝6時30分。

目覚まし時計が鳴る。

だったとします。

実際には、その間に7時間あります。

しかも睡眠中はずっと同じ状態ではありません。

ノンレム睡眠やレム睡眠など、異なる睡眠状態が繰り返されています。

夢を見ていたかもしれません。

一時的に目覚めていた可能性もあります。

しかし朝になって、その途中の出来事をほとんど覚えていなければ、

自分の記憶では、

「電気を消した」

↓

「目覚ましが鳴った」

という流れになります。

この「?????」の部分について思い出せることが少ないほど、

「寝たと思ったら朝だった」

という感覚につながると考えると分かりやすいでしょう。

ただし「睡眠中は時間がまったく分からない」とは限らない

ここは少し意外なところです。

「眠ったら時間感覚はなくなる」

と思うかもしれません。

しかし、そこまで単純ではありません。

日本で行われた研究では、

「自分で決めた時刻に目覚めようとする」

という条件で、睡眠中の時間判断が調べられています。

参加者は10人と小規模な実験ですが、自分で目覚めようとした条件では、自然覚醒の条件よりも時間判断が正確でした。

この研究だけで睡眠中の時間感覚すべてを説明できるわけではありません。

ただ、

眠っているからといって、時間に関する処理が完全に消えているとは限らない

ことを示す興味深い結果です。

つまり、

「睡眠=時間感覚が完全にゼロになる」

とは言い切れないのです。

夜中に何度も目覚めると「夜が長い」と感じるのはなぜ?

反対の経験をしたことはないでしょうか。

夜中に何度も目が覚め、

「今日は夜が長いな……」

と感じる日です。

たとえば、

午前1時に目覚める。

時計を見る。

再び眠る。

午前3時にまた目覚める。

時計を見る。

午前5時にも目覚める。

そして7時に起きる。

この場合、朝になったときにも、

「1時」

「3時」

「5時」

という情報が残っています。

つまり、睡眠中にも複数の「時間の目印」ができています。

一瞬に感じる夜と長く感じる夜

夜の状態 朝に残る目印 感じ方の例
途中の記憶がほとんどない 少ない 「もう朝?」と感じやすい
夢を覚えている やや増えることがある 「いろいろ夢を見た」と感じる
夜中に何度も時計を見る 多い 「長い夜だった」と感じやすい
途中で目覚めても覚えていない 少ない 「一瞬だった」と感じることがある

もちろん、夜の長さの感じ方がこれだけで決まるわけではありません。

ただ、

途中の出来事をどれくらい覚えているか

という視点を加えると、

「同じ7時間なのに感じ方が違う」

という不思議を理解しやすくなります。

夢を見ている時間は現実と同じなの?

ここで気になるのが夢です。

夢の中では、

「何時間も旅をしていた」

「ずっと誰かと話していた」

「何日も過ごしたような気がする」

と感じることがあります。

では、夢の中では現実とは違う速さで時間が進んでいるのでしょうか。

答えは、まだ単純ではありません。

普通の夢では時間を測るのが難しい

夢の研究には一つ難しいところがあります。

普通の夢の場合、

「今から夢の中で30秒測ります」

と研究者にリアルタイムで知らせることができないからです。

多くの場合は、目覚めた後に、

「こんな夢を見た」

と報告します。

そのため、

その夢の内容が実際の睡眠中の何分間に対応していたのか

を正確に調べることは簡単ではありません。

明晰夢なら「夢の時間」を調べられる

そこで研究に使われているのが明晰夢です。

明晰夢とは、

夢の中で「これは夢だ」と気づいている状態です。

明晰夢を見ることができる人に、

・夢の中で数を数える
・歩く
・決められた動作をする

などの課題を行ってもらう研究があります。

2014年に報告された実験では、夢の中で数を数える課題では、起きているときとの統計的に有意な差は確認されませんでした。

一方で、歩行など身体動作をイメージする課題では、夢の中のほうが時間が長くなる結果がみられました。

つまり、

「夢の1分=現実の○分」

という単純な公式があるわけではありません。

夢の中の時間感覚は、行っていることによって違う可能性があります。

では、なぜ夢では「何時間も過ごした気がする」の?

ここが夢の面白いところです。

夢では、

学校にいた。

↓

突然、知らない街にいる。

↓

次の瞬間には子どもの頃の家にいる。

といったように、場面が突然変わることがあります。

現実なら、

家を出る。

車に乗る。

移動する。

目的地に着く。

という時間が必要です。

ところが夢では、その途中が省略されたような展開になることもあります。

ただし、「夢の物語が長い」ことと、「実際に長時間夢を見ていた」ことは同じではありません。

夢の中で数時間や数日を過ごしたような感覚があったとしても、

その時間が現実と同じ長さで経過していたとは限らないのです。

「そもそも夢はいつ見ているの?」

と気になった方はこちらも参考にしてみてください。

▷レム睡眠・ノンレム睡眠の違いとは?眠っている間に脳で起きている驚きの秘密

眠っている間、脳は「何もしていない」わけではない

眠っている時間が一瞬に感じると、

「何もしていなかった時間」

のように思えるかもしれません。

しかし、睡眠中も脳は活動しています。

睡眠と記憶の定着の関係などは、国内外で研究されています。

また、睡眠中でも外から入る音などの情報に対する処理が完全になくなるわけではありません。

つまり、

「覚えていない」=「何も起きていない」

ではないのです。

本人には一瞬だったように感じても、

その間ずっと脳が停止していたわけではありません。

睡眠中の脳の働きをもっと知りたい方はこちらも参考にしてみてください。

▷寝るだけで脳は掃除される?睡眠中に起こる驚きの変化

「写真アルバム」で考えると分かりやすい

ここまでの話を、写真アルバムにたとえてみましょう。

起きている一日は、

朝食。

仕事。

昼食。

買い物。

夕食。

テレビ。

と、たくさんの写真が入ったアルバムのようなものです。

ページをめくると、

「今日はこんなことがあった」

と振り返ることができます。

一方、眠った夜のアルバムに残っている写真が、

1枚目:布団に入った

2枚目:朝起きた

だけだったらどうでしょうか。

時計では7時間経過しています。

しかし、振り返るための写真は2枚しかありません。

すると、

「布団に入ったと思ったら、もう朝だった」

という感覚になります。


もちろん、本当に脳が写真を保存しているわけではありません。

これは時間感覚を分かりやすくするためのたとえです。

ただ、

「時間が飛んだ」のではなく、「朝に振り返れる目印が少ない」

と考えると、

「寝ている時間はなぜ一瞬なのか?」

という疑問をイメージしやすくなります。

深く眠るほど時間が短く感じるの?

ここも誤解しやすいところです。

深く眠れば眠るほど、時間が短く感じるとは言い切れません。

一晩の睡眠では、

ノンレム睡眠。

レム睡眠。

といった異なる状態が繰り返されています。

そのため、

「8時間が一瞬だった」

からといって、

「8時間ずっと深い睡眠だった」

という意味ではありません。

逆に、

「長い夜だった」

と感じたからといって、

必ずしも睡眠状態が悪かったと判断できるわけでもありません。

朝の時間感覚だけで、実際の睡眠状態を判断することはできないのです。

「8時間寝たのに一瞬だった」はどういうこと?

では最後に、

0時に寝て8時に起きた場合

を考えてみましょう。

時計では8時間です。

しかし本人が覚えているのが、

「目を閉じた」

↓

「朝になった」

だけだったとします。

すると、

時計では8時間。

体感では一瞬。

というズレが生まれます。

もちろん、8時間が本当に消えたわけではありません。

睡眠中にも脳ではさまざまな活動があり、

睡眠状態も変化しています。

ただ、

その時間を「起きている8時間」と同じように連続した出来事として覚えているわけではない

というところがポイントです。

睡眠と時間感覚について分かっていること

ここまでを整理してみましょう。

分かっていることと、まだ単純には言えないこと

研究から分かっていること 単純には言えないこと
時計の時間と主観的な時間は一致しないことがある 睡眠中は時間感覚が完全になくなる
睡眠中は外部刺激への反応が低下する 深く眠るほど必ず時間が短く感じる
睡眠中でも時間判断ができる可能性がある 夢の1分が現実の何分か決まっている
明晰夢を使って夢の中の時間を調べる研究がある 長い夢=実際に長時間夢を見ていた
朝に覚えている出来事の量には個人差がある 「一瞬だった」という感覚だけで睡眠状態の良し悪しは判断できない

 

まとめ|眠っている時間が「あっという間」に感じるのはなぜ?

眠っている時間が「あっという間」に感じる理由は、

一つの仕組みだけで完全に説明されているわけではありません。

ただ、起きている時間と眠っている時間では大きな違いがあります。

起きている時間には、

時計。

会話。

仕事。

食事。

移動。

スマホ。

明るさ。

など、時間を振り返るための目印がたくさんあります。

一方、睡眠中は外からの刺激への反応が少なくなり、

途中の出来事を朝まで連続して覚えているとも限りません。

そのため、

「寝る前」

と

「朝起きた瞬間」

が記憶の中で直接つながったように感じることがあります。

こうした違いが、
「寝たと思ったら、もう朝だった」
という感覚につながる一つの手がかりと考えられます。

ただし、睡眠中に時間の処理が完全になくなっているわけではありません。

自分で決めた時刻に起きようとすると時間判断が変化する可能性を示した研究もあります。

夢の中の時間についても、明晰夢を使った実験が行われています。

つまり、

眠っている時間は「消えている」のではなく、起きているときとは違う形で体験されている

と考えると分かりやすいでしょう。

時計では確かに7時間。

それなのに、自分の感覚では一瞬。

毎晩当たり前のように経験している睡眠には、

こんな不思議な「時計の時間」と「感じる時間」のズレが隠れているのです。

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参考・出典

・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

・鈴木博之「睡眠中の情報処理」生理心理学と精神生理学

・池田大樹・宮地弘一郎・林光緒・藤澤清「自己覚醒の企図が睡眠経過中の時間判断に及ぼす影響」

・福田一彦「睡眠中の心理現象と脳波像」

・国立精神・神経医療研究センター「睡眠の可視化~良い睡眠とは~」

・明晰夢における時間感覚の研究(2014年)

※夢の中の時間に関する研究のみ、海外文献を補助的に使用しています。

 

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