寝る前に勉強すると、記憶は本当に強くなる?睡眠が記憶を強くする仕組み

健康

「勉強したら、すぐ寝たほうがいい」

そんな話を聞いたことはありませんか?

試験前になると、夜遅くまで机に向かう方も多いでしょう。

一方で、「寝る前に覚えたことは記憶に残りやすい」と聞いて、あえて眠る直前に暗記をする方もいます。

では、本当にそうなのでしょうか。

寝る前に勉強すると、記憶は強くなるのでしょうか。

そもそも、眠っている間に脳で何が起きているのでしょうか。

実は、睡眠は単なる「休憩時間」ではありません。

私たちが眠っているあいだにも、脳では日中に得た情報の整理や処理が行われています。

学習した内容を安定した記憶へと変化させる「記憶の固定」にも、睡眠が関係していると考えられています。

つまり、勉強は「参考書を閉じたところ」で終わっているとは限らないのです。

もしかすると、眠っているあいだも、脳は静かに勉強の続きをしているのかもしれません。

今回は「寝る前の勉強」と「睡眠」が、私たちの記憶にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

「覚えたはずなのに忘れる」のはなぜ?

勉強した直後は、内容をかなり覚えているように感じます。

英単語を何度も読み、意味を確認し、問題にも正解できる。

「これなら明日も大丈夫」

そう思っていたのに、翌朝になると、

「…..あれ、この単語なんだっけ?」

となる。

これは、勉強が無駄だったわけではありません。

ポイントは、覚えること長く記憶しておくことは同じではないということです。

新しい情報を学ぶと、脳にはその情報に関する記憶が作られます。

しかし、学習直後の記憶は、まだ変化しやすい状態にあります。

そこで重要になるのが、記憶の固定です。

記憶の固定とは、簡単にいえば、学習したばかりの情報を、あとから思い出しやすい、より安定した状態へと変化させていく過程です。

そして、この過程に関係しているのが「睡眠」です。

つまり、

「勉強する」→「記憶が作られる」→「眠る」→「睡眠中に記憶に関する処理が進む」→「翌朝に思い出しやすくなる」

という流れが考えられるのです。

では、眠っている脳では一体何が起きているのでしょうか。

眠っている脳は、本当に休んでいる?

「寝ているんだから、脳も休んでいる」

私たちはつい、そう考えてしまいます。

もちろん睡眠は脳や身体の回復に重要な時間ですが、脳が完全に停止しているわけではありません。

睡眠中も脳ではさまざまな活動が続いています。

睡眠には大きく分けて「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があり、それぞれ異なる特徴をもっています。

睡眠サイクルについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

レム睡眠・ノンレム睡眠の違いとは?眠っている間に脳で起きている驚きの秘密

その中でも記憶について興味深いのが、睡眠中に起こる「再活性化」です。

昼間の記憶が、眠っているあいだにもう一度現れる?

たとえば、昼間に新しい英単語を覚えたとします。

そのとき脳では、その学習に関連する神経活動が起こっています。

そして眠っているあいだに、学習時に関連した活動が再び現れることがあります。

まるで脳の中で、

「今日覚えた情報を整理しておこう」

という作業が行われているようなものです。

もちろん、脳が実際に言葉で判断しているわけではありません。

しかし、このような睡眠中の神経活動が、記憶の固定に関係すると考えられています。

つまり、私たちが「何もしていない」と思っている睡眠中にも、脳では記憶に関する重要な処理が行われているのです。

だから「寝る前の勉強」が気になる

ここで、最初の疑問に戻りましょう。

なぜ「寝る前の勉強」が注目されるのでしょうか。

その理由の一つは、学習してから睡眠までの時間が短いことです。

朝に英単語を覚えた場合、その後には授業や仕事、会話、SNSなど、さまざまな情報が入ってきます。

一方、寝る直前に復習して、そのまま眠れば、その後の大量の新しい情報が入ってくることはありません。

そのため、「学習直後の睡眠」が記憶の固定にどのように関係するのかは、長く研究されてきました。

ただし、ここで注意したいことがあります。

寝る前に勉強すれば、必ず記憶力が上がるという単純な話ではありません。

そして、もっと重要なのは、

寝る前の勉強のために睡眠時間を削ってはいけない

ということです。

「あと1時間だけ勉強する」が裏目に出る理由

試験前には、こんなことが起こります。

「あと1時間だけ勉強しよう」

そう思って始めたのに、気がつけば深夜。

「せっかくだから、もう少し…..」

と続けてしまい、睡眠時間が短くなる。

翌朝は眠くて、頭がぼんやり。

これでは、せっかく勉強した内容を十分に活用できない可能性があります。

睡眠は記憶だけでなく、注意力や判断力、感情の調整などにも関係しています。

そのため、

「勉強時間を増やせば増やすほど、必ず得をする」

とは限りません。

場合によっては、夜に無理して1時間勉強するより、そこで切り上げて眠り、翌朝に復讐したほうが効率的なこともあります。

ここが、睡眠と勉強のおもしろいところです。

眠ることは勉強の反対ではないのです。

むしろ、睡眠まで含めて一つの学習サイクルと考える方が自然なのかもしれません。

睡眠そのものについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

睡眠とは何か?健康に欠かせない役割と最新研究

寝る前は「読む」より「思い出す」

では、寝る前には何をすればいいのでしょうか。

ここで重要になるのが、思い出すという作業です。

たとえば、英単語を20個覚えたとします。

寝る前に20個をもう一度眺めて、

「よし、覚えた」

と本を閉じる。

これも復讐ではあります。

しかし、さらに一歩進めるなら、いったん本を閉じて、

「20個のうち、何個思い出せる?」

と自分に問いかけてみるのです。

すると、意外と出てこない単語があることに気づきます。

このような「思い出す」練習は、記憶を強化する学習法として知られています。

つまり、

覚える → 思い出す → 眠る

という流れを作るのです。

そして、ここからが面白いところです。

「分かる」と「思い出せる」は、実は違う

勉強中に、

「これ、知ってる」

と思うことはありませんか?

参考書を開けば意味がわかる。

解説を読めば、「そうそう、それだった」と思う。

ところが、何も見ずに説明してくださいと言われると、言葉が出てこない。

これは、

見ればわかる

という状態と、

自分の頭から取り出せる

という状態が違うからです。

試験で必要になるのは、後者です。

だから寝る前の勉強では、最後の数分だけでも「思い出す時間」を作るとよいでしょう。

たとえば、

「今日覚えたことを3つ言ってみる」

「今日一番重要だったことは何?」

「誰かに説明するとしたら、どう説明する?」

と自分に質問します。

思い出せなかったところだけ、もう一度確認します。

そして眠る。

この流れなら、睡眠を単なる休憩ではなく、学習サイクルの一部として利用できます。

自分は何か物事を覚えるときによく使う方法があります。

それは、自分が覚えようとしていることを、誰かにきちんと丁寧にわかりやすく教えられる想像をします。

それを相手の立場になり、完璧に砕いて伝えられているか、もしくは、その説明をした後に一つの疑問もなく伝わっているかを何度も反復します。

そうしているうちに、余計な情報が剥がれ落ち、自然と端的にまとまるのです。

教えようと想像している相手は若ければ若いほどいいと思っています。

個人的な覚え方なので、誰にでも当てはまるかはわかりませんが、こういう手段もあり、試してみる価値はあると思われます。

寝る前の30分を「記憶の準備時間」にする

では、実際に寝る前の30分を使うなら、どうすればよいのでしょうか。

おすすめなのは、30分間ずっと新しい内容を詰め込むことではありません。

最初の20分は復讐

その日に学んだ内容を振り返ります。

新しい情報を大量に追加するより、

「今日覚えたことを整理する」

という意識で十分です。

最後の10分は本を閉じる

ここがポイントです。

参考書やノートを閉じ、

「今日何を覚えた?」

と自分に問いかけます。

思い出せたものを確認し、思い出せなかったものだけ見直します。

そして、そのまま眠ります。

翌朝にもう一度思い出す

起きたら、もう一度何も見ずに思い出してみます。

夜に学び、睡眠を挟み、朝に取り出す。

この流れを作るだけでも、「読むだけ」の勉強とは違った感覚になるはずです。

睡眠は「感情の記憶」にも関係している

ここからは、睡眠と心理学の少し面白い話です。

睡眠と記憶の関係は、勉強だけに限りません。

たとえば、嫌なことがあった日の夜。

布団に入った瞬間、

「さっきの言葉、どういう意味だったんだろう」

「自分、何か悪いことしたかな」

と、昼間は気にしていなかったことまで気になってくることがあります。

ところが翌朝になると、

「あれ?昨日ほど気にならない」

と感じる。

もちろん、眠ればすべての悩みが消えるわけではありません。

しかし、睡眠は出来事に結びついた感情の処理にも関係しています。

つまり睡眠は、

「何を覚えておくか」

だけではなく、

「その記憶をどう受け止めるか」

にも関係している可能性があるのです。

これは恋人や人間関係を考えると、かなり興味深いテーマです。

夜中には「嫌われたかもしれない」と思っていたのに、朝になると「考えすぎだったかも」と思える。

そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。

結局、寝る前に勉強すると記憶は強くなる?

ここまでの話をまとめてみましょう。

「寝る前に勉強すれば、必ず記憶力が上がる」

というほど単純ではありません。

しかし、学習した情報の記憶を睡眠が固定する過程に関わることは、さまざまな研究で示されていいます。

大切なのは、「寝る前」という時間帯だけを特別扱いすることではありません。

むしろ、

学ぶ → 思い出す → しっかり眠る → 翌朝もう一度思い出す

というサイクルです。

そして、ここから一つ重要なことが分かります。

睡眠を削ってまで勉強時間を増やす必要はないということです。

眠っている時間を「何もしていない時間」と考えると、つい睡眠を削りたくなります。

しかし、睡眠が記憶の固定や翌日の認知機能に関係していると考えれば、睡眠は学習の邪魔ではありません。

むしろ、学習を完成させるためのプロセスなのです。

もしかすると、「寝る」までが勉強なのかもしれない

勉強というと、机に向かってる時間だけを想像します。

参考書を読む。

ノートをとる。

問題を解く。

暗記カードを見る。

しかし、その後に眠る時間まで含めて考えてみると、学習の見え方が少し変わります。

昼間に情報を集める。

夜に思い出す。

眠っている間に脳が処理する。

朝になったら、もう一度取り出してみる。

そう考えると、睡眠は「勉強から離れる時間」ではありません。

勉強したことを脳になじませる時間とも考えられます。

ですから、今日寝る前に勉強するのであれば、最後に一つだけ試してみてください。

本を閉じて、

「今日、何を覚えた?」

と自分に問いかけてみるのです。

そして、思い出せるだけ思い出したら、安心して眠る。

翌朝、同じ質問をしてみてください。

昨日より自然に答えが出てきたなら、眠っている間にも脳が学習した情報を整理していたのかもしれません。

そう考えると、「もう寝よう」と思うことが、少しだけ前向きな選択に感じられるのではないでしょうか。

睡眠を知ると、「勉強のやり方」そのものが変わる

今回のテーマである「寝る前の勉強」。

実は、その本当の面白さは「夜に勉強すること」そのものではありません。

大切なのは、勉強と睡眠を別々のものとして考えないことです。

勉強して、覚えて、思い出して、眠る。

その翌朝、もう一度思い出す。

この一連の流れまで含めて「学習」と考えると、今までとは違う勉強の仕方が見えてきます。

さらに、睡眠と記憶の関係を知ると、夢や感情、ストレス、恋愛など、さまざまな心理現象にも興味が広がっていきます。

「なぜ嫌なことを何度も思い出すのか」

「なぜ夜になると不安になるのか」

「なぜ好きな人のことを考えると眠れなくなるのか」

これらも、睡眠と心理学を組み合わせると、少し違った角度から考えられます。

夢と記憶の関係が気になる方は、こちらの記事も参考にしてみてださい。

夢を見る理由とは?最新研究でわかっていること

また、現代人には欠かせないスマートフォンと睡眠の関係も、記憶や脳の働きを考えるうえで興味深いテーマです。

寝る前のスマホは睡眠に悪い?最新研究でわかった本当の理由

最後に__眠っている時間も、あなたの脳は働いている

私たちは、眠っている時間を「一日が終わった時間」と考えがちです。

しかし、脳にとっては、それだけではありません。

日中に学んだこと。

誰かと話したこと。

嬉しかったこと。

嫌だったこと。

新しく知ったこと。

そうした一日の情報を抱えたまま、私たちは眠りにつきます。

そして眠っている間にも、脳ではさまざまな処理が続いています。

だからこそ、

「今日はもう勉強できないから寝よう」

ではなく、

今日はここまで勉強したから、あとは脳に任せて寝よう

と考えてみるのもいいかもしれません。

寝る前に覚えたことが、翌朝すべて完璧に頭へ入っているわけではありません。

それでも、睡眠が記憶を支える重要な役割を担っていることを知れば、「眠る」という行為の見え方は変わります。

勉強は、机の上だけで終わるものではない。

もしかすると、

眠ることまでが、勉強なのかもしれません。

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